ごあいさつ
一般社団法人 飯塚医師会 会長
岩 見 元 照
令和6年度 事業計画
令和6年元旦、正月気分も吹き飛ぶ能登半島地震で全国に激震が走りました。お亡くなりになられた方々には心からご冥福をお祈りします。被災された方々にはお見舞いを申し上げます。また被災者の医療・看護に携われれているDMATやJMATのメンバーの方々へ深く感謝申し上げます。今回の災害医療衛生対策でも断水による衛生環境の悪化から種々の感染症の拡大が報告されており、飯塚医療圏での災害時の上・下水道対策の現状の確認をしておくべきと考えました。
昨年5月8日に新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が2類から5類感染症になり、隔離や濃厚接触者の判断も必要なくなり、感染対策は個人・事業者の判断が基本とされました。市中では会食も盛んとなり、昨年12月当医師会も4年ぶりに忘年会を開催しました。冬季はインフルエンザA及びBとの同時流行から、学級閉鎖も多数報告される状況で、会員の先生方は発熱外来の対応に多忙を極められたと思います。例年、春以降は感染者数が減少することから、第10波も消退するものと予想されますが、変異を繰り返して新たな変異株による再流行も懸念されます。また、抗コロナウイルス感染症の抗原検査や治療薬の自己負担の存在から、検査や治療薬を希望しない患者も出てくるようになり、重症化や潜在患者数の増加も懸念されます。重症患者の入院調整は病病連携、病診連携でなされ、今の所大きな混乱はありませんが、今後の発生数、重症患者数により柔軟に対応することが必要と考えます。経営面では新型コロナウイルス感染症患者の病床確保料や発熱外来における診療報酬の特例が減額され、with COVID-19の時代をどう舵取りしていくかを試行錯誤していく必要があります。
さて、本年度の事業計画の重点は、1)医師の働き方改革への対応 2)在宅医療・介護連携推進事業 3)地域医療構想策定への対応 4)医療DXへの対応が挙げられます。
医師の働き方改革では、労働基準法の時間外労働時間の上限規制が医師に適応されることで生じる飯塚医療圏の医療提供体制への影響分析と対策が喫緊の課題です。特に地域の診療時間外の診療体制、特に夜間の1次救急対応では、かかりつけ医の可能なかぎりの参加と飯塚急患センター(内科)病院群輪番制病院での診療に加えて、飯塚病院での平日準夜(16:30~22:30)、休日日勤帯+準夜(8:30~22:30)の1次救急(Walk-In)の内科、小外科の診療が継続されます(曜日に関係なく深夜時間帯の外来閉鎖)。懸案の小児科時間外診療については、4月1日より、飯塚市立病院が0歳児からの小児科休日・夜間診療を開始し、飯塚急患センター小児科は休診となりました。飯塚病院救命救急センターは、入院治療が必要な重症患児が対象となります。地元小児科医会、大学医局の医師などの参加により運営されます。飯塚薬剤師会のご協力や飯塚病院小児科看護師さんたちの新施設のコメディカルへのスキルアップへのご協力などもあり運営されています。今後、運営上の種々の問題点が俎上にのぼってくると思われますが行政とともに解決していきたいと思います。
在宅医療・介護連携推進事業については、福岡県内でもその活動の活発さと充実について評価の高い5ブロック地域包括ケアシステムを継続的に発展させていきます。飯塚地域在宅医療・介護連携推進会議とその傘下にある教育研修・住民啓発、社会資源広報・成果指標、5ブロック地域医療包括ケアシステム推進協議会の3つのワーキンググループを2市1町や保健福祉環境事務所の行政と共に地域課題の解決を図ります。今後は、高齢者の増加と介護課題の複雑化、多様化に対応すべく、飯塚医療圏での持続可能な訪問診療体系をも模索していきたいと思います。
地域医療構想策定では、昨年度、飯塚医療圏では二つ目の地域医療支援病院に飯塚市立病院が承認されました。すでに、救急医療については、救急搬送受け入れ数の増加など目覚ましい実績を残されており、今後、小児時間外救急医療や看護師教育の分野でも活躍が期待されます。
医療DXへの対応では、とびうめネットの利用促進を図るため、患者情報の入力の簡略化や自動更新、レセプトデータの閲覧が可能になるなど北九州市や大牟田市の利用例を参考に自治体に協力を依頼しており、1日も早い実現が期待されます。
最後に、飯塚医師会の事業3部門についてです。看護高等専修学校は、残念ながら令和6年度入学生も定員割れしてしまいました。一方、3次試験でも応募があり、飯塚医療圏外の受験生や質の高い受験生が応募してきたことより、今後も複数回の受験を実施すること、高等学校やハローワーク、他医療圏にも入試要項を配布することなど地道に受験生集めをしていきたいと思います。検診検査センターは、部長を筆頭に、経営改善、業務能力の向上、経費削減、行政との交渉などに取り組み黒字化に成功しました。訪問看護ステーションは市内の訪問看護ステーションの増加もあり、利用者数の減少があります。当ステーションではケアプランの作成から24時間訪問看護、訪問リハビリテーションの利用が可能であり、医師会会員の先生方からのご依頼をお待ちしています。医師会の先生方や病院群の先生方には、これからの、厳しい医療界の情勢ではありますが、今後とも、ご指導、ご鞭撻、ご協力の程よろしくお願い致します。
重点項目
- 新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの周期的流行に応じた医療提供体制の整備
- 地域医療の連携及び対策(地域包括ケアシステムの構築・深化および地域事情に沿った地域医療構想の調整)
- 救急医療対策の推進
夜間の1次救急医療体制の整備、休日在宅当番医制・病院群輪番制・大災害時支援態勢 - 生活習慣病対策、認知症・精神保健対策
- 福岡県医療情報システム(とびうめネット)の拡充
- 組織力強化への取り組み
- 医道倫理の昂揚(自浄作用活性化の推進)
- 各種検診、人間ドック、がん検診、特定健診・特定保健指導事業の推進
- 広報活動、市民公開講座の充実
- 医療法及び医師法改正に関する対応
業務内容(平常)
-
会 務
(1)諸規定の検討
(2)事務の合理化・会計の透明化
(3)職員対策
(4)ブロック医師会との連携強化
(5)医政の強力な展開
(6)行政、関係官庁との緊密な連携 - 会 員
(1)医道倫理の昂揚
(2)生涯研修の充実
(3)保険対策並びに保険審査に対する対応
(4)福祉対策の充実
(5)会員保険の促進
(6)税務対策
(7)医報・広報活動の充実
(8)麻薬・覚醒剤対策
(9)医事調停
(10)医療情報開示
(11)従業員対策 -
地 域 医 療
(1)プライマリケアの充実・福岡県医師会「新かかりつけ医」体制の推進
(2)病診連携の推進
(3)救急医療対策(大規模災害時対策を含む)
(4)健康教育の活発化
(5)感染症(新型コロナウイルス、新型インフルエンザ、麻しん、風しん、MRSA、C型肝炎、B型肝炎)対策
(6)乳幼児保健対策、予防接種の定期接種化実現に向けた活動(おたふくかぜ)
(7)学校医活動
(8)産業医活動
(9)介護保険活動
(10)住民検診・集団検診・人間ドック検診・事業所検診・団体検診の促進
(11)医療・保健・福祉情報システムの整備・充実
(12)認知症初期集中支援チーム活動(複数の専門職が認知症が疑われる人や認知症の人を訪問し、認知症サポート医に相談しながら初期の支援を包括的・集中的に行い、自立生活のサポートを行います。) - 事 業
(1)看護高等専修学校
(2)臨床検査センター並びに検診センター
(3)訪問看護ステーション並びにケアプランサービス