ごあいさつ
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一般社団法人 飯塚医師会 会長
岩 見 元 照
令和7年度 事業計画
昨年末より大流行したA型インフルエンザ感染症では、会員の先生方におかれましては日常診療の中での、発熱外来に多忙を極められた事と存じます。特に、マイコプラズマ感染症やCOVID-19感染症も同時に流行していて「トリプルデミック」とも報じられました。抗原キットや治療薬の欠品、不足により大きなストレスを感じられた先生方も多かったと思います。特に、年末、正月休みの当番医で発熱外来をされた先生方お疲れさまでした。一日100人を超える患者を診療された先生もおられたのではないでしょうか。抗原検査キットが底をついたり、コロナ、インフルエンザなどの治療薬が自院や門前薬局から無くなってしまい、ひっきりなしにかかってくる発熱患者からの電話に対応できず、ほぞをかむ思いをされたのではないでしょうか。飯塚医師会としては、来るべき来年の感染症の流行に備えて、行政、飯塚薬剤師会、卸業者などの皆様と連携し、休み期間中の検査キット、薬剤調達が潤沢かつ円滑になるよう対策を練って行きたいと考えております。会員の先生方のご意見をいただければ幸甚に存じます。
さて、本年度の事業計画の重点は、1)医師の働き方改革への対応 2)在宅医療・介護連携推進事業 3)新たな地域医療構想への対応 4)医療DXへの対応 5)医師会三事業部門が挙げられます。
医師の働き方改革が施行され、福岡県のまとめた地域医療構想におけるアンケートではその影響はわずか4%、ここ飯塚医療圏においても11%とされています。しかし、実際の病院の先生方の感覚では、大学病院からの医師派遣の削減や当直業務の見直しにより、自院の救急医療体制の見直しを余儀なくされ、いろいろな対策や努力の結果、影響が最小限におさえられているだけで、いわばぎりぎりの状態だということではないでしょうか。働き方改革施行後の、救急搬送受け入れ困難事例の増加は福岡県ではないとの報告でしたが、他の地域では16%増加したとの報告もあり今後も注視していく必要があります。そのような中、飯塚病院に次いで、飯塚医療圏の地域医療支援病院となった飯塚市立病院は、年間救急搬送数が3000件を超える数となりました。さらに同院は昨年4月1日より0歳児からの小児科休日・夜間診療を開始。会員小児科の先生方、九州大学、久留米大学、福岡大学病院医局の先生方、飯塚薬剤師会の先生方のご協力により、昨年から今年にかけてのトリプルデミックを乗り越えることができました。コロナ禍やインフルエンザ大流行の嵐の中をくぐり抜け、飯塚医療圏の最後の砦としての役割を果たしてこられた飯塚病院の先生方にも感謝を申し上げます。
在宅医療・介護連携推進事業については、福岡県内でもその活動の活発さと充実について評価の高い5ブロック地域包括ケアシステムを継続的に発展させていきます。飯塚地域在宅医療・介護連携推進会議とその傘下にある教育研修・住民啓発、社会資源広報・成果指標、5ブロック地域医療包括ケアシステム推進協議会の3つのワーキンググループを推進役として2市1町や保健福祉環境事務所の行政と共に地域課題の解決を図ります。今後は、高齢者の増加にともなう救急搬送の増加、精神疾患の合併など介護課題の複雑化、多様化に対応すべく、訪問診療委員会を立ち上げて、飯塚医療圏での持続可能な訪問診療体系の構築をしていきたいと思います。
新たな地域医療構想の目指すべき方向性が示さました。85歳以上の増加や人口減少がさらに進む2040年とその先を見据え、飯塚医療圏の全ての世代の患者が、適切に医療・介護を受けながら生活し、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方が確保できる医療提供体制を構築する必要があるというものです。さらに、「治す医療」と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療・介護体制を構築し、外来・在宅、介護連携等も新たな地域医療構想の対象にするとされました。病床機能・医療機関機能、地域医療介護総合確保基金、医療機関機能の確保、基準病床数と必要病床数の整合性の確保、行政の役割、そして今回新たに地域医療構想に精神医療を位置付けすることとなったことは、認知機能障害や精神疾患を伴う高齢者の増加に対応する施策と思われます。今後、具体的な方針が示されると思われます。
医療DXへの対応では、とびうめネットの利用促進を図るため、患者情報の入力の簡略化や自動更新、レセプトデータの閲覧が可能になるなど北九州市や大牟田市の利用例を参考に自治体に協力を依頼しており、1日も早い実現が期待されます。
飯塚医師会の三事業部門についてです。看護高等専修学校は、残念ながら令和7年度の入学生も定員割れしてしまいました。一方、4次試験でも応募があり、飯塚医療圏外の受験生や質の高い受験生が応募してきたことにより、今後も複数回の受験を実施すること、高等学校やハローワーク、他医療圏にも入試要項を配布することなど地道に受験生集めをしていきたいと思います。検診検査センターは、部長を筆頭に、経営改善、業務能力の向上、経費削減、行政との交渉などに取り組み、昨年度も黒字化に成功しました。新規購入した高性能な胃検診車両の宣伝、電子カルテとのデータ連携の構築、ファクス至急でのデータ転送の迅速化、パニックデータ転送基準の各医院毎の調整、新規開業の会員への勧誘など今年も営業を頑張る予定です。訪問看護ステーションは市内の訪問看護ステーションの増加もあり、利用者数の減少があります。当ステーションではケアプランの作成から24時間訪問看護、訪問リハビリテーションの利用が可能であり、医師会会員の先生方からのご依頼をお待ちしています。
最後に、医療政策において、診療報酬改定による生活習慣病管理料の新設、ベースアップ評価料の算定など今後も財務省、厚労省との駆け引きを余儀なくされる厳しい医療界の情勢ではありますが、今年は、参議院選挙の年であります。「医政なくして医療なし」の言葉のように、医療が人命に関わる公益性の高い事業であるならば、医療現場の主張や要望を政治の場に届けることは非常に重要と思われます。日本医師会副会長で組織内候補である、「かまやち さとし」先生を応援していきたいと思います。先生方のご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
重点項目
- 新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの周期的流行に応じた医療提供体制の整備
- 地域医療の連携及び対策(地域包括ケアシステムの構築・深化および地域事情に沿った地域医療構想の調整)
- 救急医療対策の推進
夜間の1次救急医療体制の整備、休日在宅当番医制・病院群輪番制・大災害時支援態勢 - 生活習慣病対策、認知症・精神保健対策
- 福岡県医療情報システム(とびうめネット)の拡充
- 組織力強化への取り組み
- 医道倫理の昂揚(自浄作用活性化の推進)
- 各種検診、人間ドック、がん検診、特定健診・特定保健指導事業の推進
- 広報活動、市民公開講座の充実
- 医療法及び医師法改正に関する対応
業務内容(平常)
-
会 務
(1)諸規定の検討
(2)事務の合理化・会計の透明化
(3)職員対策
(4)ブロック医師会との連携強化
(5)医政の強力な展開
(6)行政、関係官庁との緊密な連携 - 会 員
(1)医道倫理の昂揚
(2)生涯研修の充実
(3)保険対策並びに保険審査に対する対応
(4)福祉対策の充実
(5)会員保険の促進
(6)税務対策
(7)医報・広報活動の充実
(8)麻薬・覚醒剤対策
(9)医事調停
(10)医療情報開示
(11)従業員対策 -
地 域 医 療
(1)プライマリケアの充実・福岡県医師会「新かかりつけ医」体制の推進
(2)病診連携の推進
(3)救急医療対策(大規模災害時対策を含む)
(4)健康教育の活発化
(5)感染症(新型コロナウイルス、新型インフルエンザ、麻しん、風しん、MRSA、C型肝炎、B型肝炎)対策
(6)乳幼児保健対策、予防接種の定期接種化実現に向けた活動(おたふくかぜ)
(7)学校医活動
(8)産業医活動
(9)介護保険活動
(10)住民検診・集団検診・人間ドック検診・事業所検診・団体検診の促進
(11)医療・保健・福祉情報システムの整備・充実
(12)認知症初期集中支援チーム活動(複数の専門職が認知症が疑われる人や認知症の人を訪問し、認知症サポート医に相談しながら初期の支援を包括的・集中的に行い、自立生活のサポートを行います。) - 事 業
(1)看護高等専修学校
(2)臨床検査センター並びに検診センター
(3)訪問看護ステーション並びにケアプランサービス